弓道の取り懸け基本と上達コツ完全ガイド

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弓道の取り懸け

弓道の練習で思うように当たらないとき、弓道の取り懸けの基礎があいまいなまま進めている可能性があります。とりかけとは何かをはっきりさせ、かけのつけ方、弓の握り方や弓の持ち方、親指の使い方、三つがけの扱いまでを整理すると、離れが汚いなどの悩みは着実に減っていきます。ぎこちない動きを解消するコツや弓手の安定を押さえ、段階的に整える手順を解説します。今日の稽古から実践できる内容にまとめています。

この記事で分かること
  • とりかけとはの要点とかけのつけ方の基本
  • 弓の握り方と弓の持ち方の正しい手順
  • 弓手と親指の使い方による安定化
  • 離れが汚いとぎこちないを直す練習コツ
目次

初心者が理解したい弓道の取り懸け基本

とりかけとは正しい意味と役割

弓道の取り懸け

とりかけとは、弦を親指にかけて保持し、狙いと引き分けで生じる力を矢へ効率的に伝達し、離れで抵抗なく弦を解放する一連の操作を指します。役割は大きく三つに整理できます。第一に、弦を確実に保持して安全に引くこと。第二に、引き分け中の力線(弓手から弦・矢へ通る直線)を乱さずエネルギーを矢へ移すこと。第三に、離れで弦道を乱さず発射の直進性を保つことです。

正しいとりかけを成立させる構成要素は、親指の角度、弦が当たる位置、手首の締め具合の三点です。親指の角(第一関節と付け根の間にできる面)に弦が収まり、指腹に引っかからないことが前提となります。手首は固めすぎず、掌に余分な握り込みがない状態を基準にします。これらがそろえば、離れの瞬間に弦が引っ掛からず、矢所のばらつきや音の不整が減少します。

加えて、会の静止では手先で弦を保持しようとせず、肩甲骨の開きと体幹の張りで支えると、指先の力みによる離れの遅れや弦の引きずりが起きにくくなります。射法八節の流れに沿って学ぶと、とりかけの位置や角度の再現性が高まり、稽古全体の安定に直結します。

参考資料:公益財団法人全日本弓道連盟「射法について」

かけのつけ方と練習での工夫

弓道

かけのつけ方は、とりかけの再現性に直結します。手首に通す向き、緒の締め具合、弦溝の角度合わせを毎回同一にすることが、安定の出発点です。装着後に、親指の遊びが最小であるか、甲や手首に過度な圧迫がないかをチェックします。

緒は、射中に緩まない最小限の締めで固定します。きつ過ぎる締めは血流を阻害し感覚を鈍らせ、離れの遅れを誘発します。弦溝は、親指の角から弦が自然に直線で抜ける方向へ合わせ、右肩・右肘のラインと矢筋が一致するよう微調整します。これにより、引き分け後半での弦の偏りや、耳側・肩側への流れを抑制できます。

練習段階では、装着→素引き→半矢→本矢の順で「装着条件が射にどう反映されるか」を確認します。特に素引きでは、弦が親指の角へ一定に収まる感触を言語化し、次回装着時の比較基準としてノート化すると再現性が向上します。

基本手順

手を清潔にし汗や滑りを拭き取ってから、かけを手首から差し込み、甲側の皺を伸ばしながら奥まで入れます。緒はきつすぎず緩みも出ないテンションで結び、弦溝が親指の角と一直線になるよう微調整します。弦をかけたときに親指の腹ではなく角の面で受けられる位置が適正です。

装着直後に素引きを行い、以下を確認します。

・弦が角で受けられているか(指腹に滑っていないか)
・第一関節の折れや過伸展が出ていないか
・手首の屈曲や回内・回外が過度でないか

再確認の際は、会で二呼吸を保ち、離れの自然さと弦の戻り音の一貫性をチェック項目に含めます。

よくある間違いと整え方

よくある誤りには、緒の締めすぎによる血行不良、弦溝の角度ずれによる弦の肩・耳側への流れ、指先だけで弦を引っ掛ける浅い保持などがあります。いずれも離れの遅れや弦の引きずりを招き、矢勢や直進性を損ないます。

整え方は、装着後の素引きで角度・深さ・押し方向をセットで確認することが基本です。親指の角に弦が当たる触覚を基準化し、毎回同じ位置と圧で再現します。弦溝は、会での矢筋に対して平行に近い角度へ微修正し、斜めに入る違和感があれば即座に戻します。指先の力は保持の最小限とし、保持の主体は手内の張りと体幹の伸びに置きます。

練習ドリル

巻藁での分解動作が効果的です。装着→素引き→半矢で離れ、の短サイクルを複数回行い、毎回の弦の収まりと離れ後の弦道を確認します。

ドリル例:

  1. 装着後30秒以内に素引きで角の収まりを確認(3回)
  2. 半矢で会二呼吸→自然離れ(5射)
  3. 本矢は的前で3射のみ、離れの直進音と弓の振動を記録

各セット後にノートへ、装着のテンション、弦溝角度、会の感触、離れ音の印象を短文で記録すると、改善点が可視化されます。

弓の握り方と弓の持ち方の基礎

弓道の取り懸け

弓の握り方は押し手の当て方、弓の持ち方は弓体全体の扱いを指します。握りでは、虎口で把を受け、掌で強く握り込まないことが前提です。手首は立てすぎず折りすぎず、前腕と弓の角度が自然に保たれる位置を基準にします。

持ち方では、胴造りの安定上に弓が真っすぐ立ち、肩線と弓の面が平行に近いこと、重心を腕力ではなく体幹で受けることが要点です。狙いの微調整時も押し手が暴れず、離れで弓がねじれにくくなります。

練習では、空握りで虎口の角度を確認し、巻藁で押しの方向を壁面などの直線基準に合わせて再現します。手のひらで弓が転がる感覚が出る場合は、掌に余分な力が入っています。虎口の一点に圧を集約し、掌中に小さな空間(手内の空)を保つことで、押しの方向が安定しやすくなります。

親指と三つがけの正しい使い方

親指は弦の保持と離れの要となる部位です。付け根から角を立て、第一関節を過度に曲げず角で受けることで、弦が指腹を滑らずに直線で抜けます。人差し指は親指を補助し、締め付けで離れを遅らせない程度の軽い支えに留めます。

三つがけは、手の大きさや指の可動域に合うサイズ選びが重要です。大きすぎると親指が遊んで弦が深く入り、小さすぎると血流が妨げられ感覚が鈍ります。装着後は素引きで、弦が親指の角へ一定に収まるか、第一関節が折れていないかを確認します。

親指の力みは、離れでの弦の引っ掛かりや手首の巻き込みを引き起こします。呼吸を合わせ、引き分け終盤で肩甲骨を開き体幹の張りを主役にすることで、指先の力みに頼らない保持が実現します。結果として、会の静止と離れの直進性が揃いやすくなります。

実践で磨く弓道の取り懸け上達ポイント

弓手を安定させ射形を整える方法

弓道の取り懸け

弓手の安定は足踏みと胴造りから始まります。左右の足で均等に体重を受け、骨盤を立て、頭頂を糸で引かれるように伸ばします。この姿勢上で、虎口で把を受け、前腕を的方向へ素直に伸ばすと押しの方向が定まります。

引き分けでは、肩で押す意識を抑え、肩甲骨を外へ滑らせる感覚で弓手を伸ばすと、上腕の余分な力が抜けます。会では掌中に小さな空間を残し、手内の張りで弓を支えます。視線は的心へ置き、手元を見ないことが押し方向の乱れ防止に有効です。

離れ直前に弓手が前へ出る場合、狙いを保つ意識が強すぎる可能性があります。会で呼気を整え、押しの方向を「前」ではなく「左右へ拡がる張り」に置き換えると、弓手の流れが抑制されます。稽古では、壁と平行に立って押し方向を視覚化し、手内の圧の流れを確認すると改善が早まります。

離れが汚い原因と改善のコツ

弓道の取り懸け

離れが汚いと矢勢が落ち、音や矢所が安定しません。主因は、指先の力み、弦溝角度のずれ、肘の通り道の乱れ、弓手の押し方向の迷いなど複合的です。改善の基盤は、会の張りを体幹で作り、指先は保持の最小限、肘は矢筋に沿って後方へ通し、弓手は面で押すことにあります。

症状別のチェックポイントとドリルは下表の通りです。表の項目を一つずつ検証し、音(澄んだ弦音)と振動(まっすぐな戻り)を手がかりに精度を高めます。反復により、離れの直進性と一貫性が整っていきます。

症状別チェックと練習ドリル

スクロールできます
症状主な原因確認ポイント練習ドリル
離れが汚い親指の力みと弦溝のずれ親指の第一関節が折れていないか巻藁で会を三呼吸維持→自然離れ
弓手が流れる前方向への押し過多押しは左右に拡がる感覚か壁に平行に立ち押し方向を視覚化
早気気味呼吸と張りの不一致会が二呼吸未満で切れていないか秒数カウントで会を一定に保つ
弦を引きずる指腹で弦を受けている弦が角で受けられているか素引きで角への収まりを反復
前上に飛ぶ肘の通り道が高い背中で肘を後方へ通せているかゴム弓で肘の軌道を矯正

上記に加えて、会の秒数、離れの音、弓の戻り方を記録し、週単位で比較すると改善の進捗が把握しやすくなります。

ぎこちない動作を滑らかにする練習法

弓道の取り懸け

ぎこちなさは、動作の目的と接続の不明確さから生じます。まず射法八節を短句で言語化し、各節の狙いを明確にします。足踏みで土台を作り、胴造りで上下を伸ばし、弓構えで弓と身体の向きを合わせる、と段階を区切ると連結が滑らかになります。

分解稽古では、各節を静止して正しい位置を体に刻み、その後二節連結、三節連結と範囲を広げます。呼吸は、引き分けで吸い、会で落ち着かせ、離れ直前は息を保つ流れを基本とします。

客観視には動画撮影や鏡前の素引きが有効です。肩のすくみ、肘の開き、腰の抜けなどの癖を可視化し、チェックリスト化して一つずつ修正すると、動作の流れが整い、ぎこちなさが解消しやすくなります。

上達を早める具体的な練習のコツ

上達速度は練習設計で大きく変わります。目的を一つに絞った短いセットを複数回行い、評価→修正→再試行のサイクルを確立します。例として、一日目はかけのつけ方、二日目は親指の角への収まり、三日目は弓手の押し方向、とテーマを分けると習得が加速します。

配分は、巻藁七割・的前三割を基準にし、週一回は動画でフォームを振り返ります。数を射つ日と質を徹底する日を分けることで、疲労を抑えつつ技能を高められます。評価指標は、会の静止時間、離れの音、弓の戻りの素直さなど、再現しやすい感覚的メトリクスを用いると効果的です。

まとめで確認する正しい弓道の取り懸け

  • とりかけの目的は保持伝達解放の三要素を揃える
  • かけのつけ方は緒の締め具合と弦溝の角度を固定
  • 弓の握り方は虎口で受け手のひらで握り込まない
  • 弓の持ち方は体幹で支え弓の面をまっすぐ保つ
  • 親指は角で受け第一関節を過度に折り曲げない
  • 三つがけは手の大きさに合うサイズで遊びをなくす
  • 弓手は左右へ拡がる感覚で前への押し過多を避ける
  • 離れが汚いときは指の力みと肘の軌道を優先修正
  • 早気は会の呼吸配分を整え二呼吸以上を目安にする
  • ぎこちない動作は射法八節を分解して順序を確認
  • 巻藁で装着素引き離れの三工程を反復して定着
  • 動画で肩肘腰の癖を客観視し修正点を具体化する
  • 練習は一テーマ集中で評価修正再試行を繰り返す
  • 音と振動の手がかりで離れの直進性を確かめる
  • 目標は会の静止時間と離れの一貫性を揃える

とりかけの意義と役割を整理し、かけ装着から手内、弓手の押し、離れの直進性までを連続した一体の流れとして捉えると、稽古の再現性が高まります。本節までの要点を自分用のチェックリストに落とし込み、稽古前後で見直す運用にすることで、短期間でも安定した改善が期待できます。

この記事を書いた人

弓道はただのスポーツではなく、心を鍛え、自己と向き合う道です。このサイトを通じて、少しでも弓道の奥深さを感じてもらえたら嬉しいです。初心者の方も経験者の方も、一緒に弓道を楽しみましょう!

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